MMTに関する議論の感想。あるいは成田さんにがっかりした話

この話も前回の話と似たような話です。

ちょっと古い話ですが、MMTに関しての議論で、池戸万作さんという方と成田悠輔さんが議論されているのを見た時にも同種の失望がありました。

 

この議論が成田さんの勝ちであるというのは世間同様僕も同感で、そこに関して異論はないです。

 

MMTを僕の理解で要約すると、

 

・日本は理論上、”円”でいくら借金しても、好きなように“円“を刷る事が可能なので、借金が返せなくなる事はありえない

・なので、日本政府は財政赤字の解消を目指さず、経済成長を目指して積極的に国債発行し、政府主導でお金をばら撒けば良い

・但し、日本円を刷りすぎればハイパーインフレになる危険性はあるのでインフレ率を見ながらばら撒きの上限は調整するべき

 

というのが日本に当てはめた場合のMMTの骨子だと理解しています。

 

池戸さんの主張はばら撒くの部分が、うろ覚えですけど各家庭に直接配布するベーシックインカム的なものだったと思います。

そしてこの論の根拠として、各国の政府支出と名目経済成長率の折れ線グラフで、政府支出を増やせば経済成長率も結局伸びるんですよ。

という話だったと思います。

 

これに対しての成田さんの議論で私が印象に残っているのは

①ばら撒かれたお金が全部パチンコに使われたとしても経済成長になるのか

②仮に毎月国からお金がもらえるようになった後で、インフレしすぎだから減らします、が現実的に可能なのか

③池戸さんが示した政府支出と経済成長率の関係は相関関係であって因果関係とは限らないだろう

という3点でした。

③に関してはごもっともですし、世間的にもこの点を持って成田さんの勝ち。という印象なようです。

個人的に②も鋭い指摘だなと思いました。

理論上正しくても政治的に難しい可能性はありますよね。

ズルくないか?と思ったのは①です。

パチンコでお金使ったら経済成長にならないって言い出したらGDPという指標自体の否定になるんですよ。

GDPという指標の有効性を疑うという議論自体はアリだと思います。ですが経済に関しての議論って基本的にGDPどうあげるか?という話なのは前提ですよね?

そこを崩すならその補助線を入れるのは話を持ち出す側のマナーじゃないかなと思ったんですよね。

会社に置き換えたら企画会議とかでこうしたら売り上げ上りますって話をしてる人に、売り上げを上げる事が本当に会社にとってプラスなんでしょうか?という話をするのは別に構わないと思いますけど、これを本当に説得したかったら”売り上げを上げるのが正義と思ってると思うんですけど、そこから一旦疑って議論してみませんか?”という話は疑ってる方が切り出すのがスジじゃないかと思うし、それをせずに相手を説得するのは無理だろうなと。

 

なぜその補助線を入れなかったのか?は想像になってしまいますが、想像できる可能性の中に成田さんが信用に値する人だけれどこうなってしまった。というパターンは僕は思いつかないんですよね。